バルセロナ、陽気な市場と地中海料理
海老乃家ディレクター 元家です。
世界の海老料理をめぐる連載「旅と海老料理と。」、第3回の舞台はスペイン バルセロナです。 コロナ禍前に訪れたヨーロッパ。
この街には、世界遺産のサグラダファミリアやカサ・バトリョなどガウディ建築の他、「絶対に行きたい!」と思っていた場所がありました。
それが、ボケリア市場です。
800年もの歴史があるスペイン最古の市場
ボケリア市場の歴史は古く、13世紀に始まった青空市場がそのルーツ。
サン・ジョセップ修道院跡地に建てられたことから、正式には「サン・ジョセップ市場」とも呼ばれています。今では観光地としても有名ですが、元々は市民の台所。
実際に足を踏み入れたその日も、場内はものすごい活気!
どの通路にも人があふれ、カウンターやスタンドからは笑い声と料理の香りが絶え間なく立ち上っていました。
テイクアウトグルメや、様々な食材が大胆に並んでいます。
殻付き海老のグリルと、名脇役のパン・コン・トマテ
市場の中にある「BAR Boqueria」で軽く食事をする事に。
その場で焼き上げられるシーフードの音と香りや、目の前でカットされる生ハムの原木が、距離感が近くなんとも刺激的でした。
私が選んだのは、殻付き海老のグリル。
殻ごと香ばしく焼かれた海老に、ハーブとオリーブオイルのソースが添えられていました。シンプルな料理ですが、ひと口食べれば、殻の香ばしさと身のジューシーさが口の中で踊るよう。
海老好きにはたまらない、旨味を楽しめる1品でした。
余談ですが、合わせて注文したのがスペインの定番「パン・コン・トマテ(Pan con tomate)」。
カリッと焼いたパンににんにくをすりこみ、完熟トマトと上質なオリーブオイルをかけ、塩を振っていただきます。しかしこのシンプルな料理、とてつもなく美味しいのです!
少ない材料で完成するので、今でも自宅でよく作るメニューのひとつです。
海老乃家のむき海老を生のまま乗せても絶品です。
そしてペアリングは、フルーティーなサングリア。
軽やかな甘さと酸味が、ハーブが効いた海老に驚くほどよく合いました。
サグラダファミリアの前で、パエリアを味わう
そしてもう1皿。
立ち寄ったのが、Tuscania Food and Wineというレストラン。
サグラダファミリアのすぐ近くにあり、あの壮大な教会が目の前に。
ここでオーダーしたのは、スペイン料理の代表格 海老のパエリア。
鉄鍋で提供されたパエリアの真ん中には、存在感たっぷりの足長海老が堂々と鎮座。
ジュワッと立ちのぼる魚介の香りに…自然と笑みがこぼれます。スプーンを入れると、米の一粒一粒にまで染み渡った海老と貝の旨味。
焦げ目のあるおこげ部分は香ばしく、レモンを絞ると酸味が加わって、味にキレが生まれます。
ひと皿で二度、三度と表情が変わるような、まさに完成度の高いごちそうでした。
何より心に残ったのは、スタッフの方のあたたかさ。
「味はどう?美味しい?」と、笑顔で声をかけてくれたやさしさが、料理の美味しさをさらに引き立ててくれました。
バルセロナと海老
ボケリア市場で見かけた海老は、どれも活きが良く、種類も豊富。
スキャンピ、赤海老、オマール…
大ぶりの海老たちが所狭しと並び、この街では海老がごく日常的な食材であることを実感しました。地中海で獲れた海老もあるでしょうし、世界の産地からも沢山集められていると思います。
地元のスーパーの鮮魚コーナーにも海老は豊富に並べられています。スペインで水揚げされる海老の中に、“カラビネーロ”という海老があります。
深海に生息するこの海老は、鮮やかな紅色の巨大なサイズで、現地でも高級食材と知られているそうです。
引き締まった甘みのある身と、クリーミーな海老味噌が特徴。
また訪れる機会があれば、是非食べてみたいものです。
芸術の街が教えてくれたこと
旅の中で強く感じたのは、この街にとって海老は「日常」であること。
特別な料理ではなく、どのレストランでも、どの市場でも、当たり前のように並んでいる。
こんなふうに毎日食卓に登場することで、食文化の厚みや多様性が育まれるのだと実感しました。
実は他にもタパスを楽しめるお店などに訪れましたが、アヒージョやタパスにも海老が使用されていました。スペインは、私が今まで訪れた国の中で料理の美味しさはトップです。
首都のマドリードにも訪れましたが、前菜からデザート、軽食まで全て絶品でまさに美食の国でした。
食を愉しみたい方へ、一番におすすめしたい国です。
次はどの国で、どんな海老に会えるだろう
市場のにぎわい、バルでの高揚感、サグラダファミリアとパエリアの記憶。
どれも、海老とともに心に刻まれた、大切な旅の一場面です。
世界の海老料理をめぐるこの連載は、まだまだ続きます。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回もどうぞ、お楽しみに。